全国の美術教育関係者の実践力を集め、中学校美術教育の果たすべき役割に臨もう
2009年6月6日
全国中学校美術教育連盟理事長 正留 久巳
平成20年度、全国中学校美術教育連盟事務局は、8月の大阪大会において、東京に移転いたしました。
これに伴い理事長の大役をお引き受けすることとなりました。微力ではありますが、教育の大 きな転換期、美術教育の更なる充実が必至のとき、全国の美術教育関係者の方々と連携を図り、課題 に取り組んでいきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
美術教育にとっては、試練の時代が続きます。美術教育に求められている、資質や能力を身につけさせられるよう、鋭意、指導法や題材開発をおこなうと同時に、高い専門性を持ち、教科のねらいを明確にし、指導にあたることが大切です。このことは、将来にわたり、子ども達に培うべきものが、造形美術教育でしか成しえない内容であるからです。これを、携わる我々が十分に認識してかかるべきと思います。
「なぜだろう」「どうしたらもっと良くなるだろう」といった欲求は、誰しもが持っているものです。「きれいだな」という根源的な感受性も、また美的欲求も皆持っているものです。子ども達は、それぞれの発達段階を通過していきます。それぞれの発達段階での教育の目標やねらいも違います。校種の違いを具体的にとらえ、認識し、理解してこそ、連携となります。そしてこの連携をどう図っていくかが今後更に重要です。相互の関連を図り、より有効な接続の在り方が望まれます。選択教科の削減、総合的な学習の時間の削減がありました。必修教科としての美術のあり方も問われています。
昨年度、新学習指導要領が告示され、平成21年度から、その移行期に入ります。日本の教育は戦後最大の転換期に入っているといえます。学力の問題、心の教育に関わる問題など様々な課題が山積する中、教育基本法改正、学校教育法改正が行われ、知・徳・体のバランスとともに、基礎的・基本的な知識・技能、思考力・判断力・表現力等及び学習意欲を重視し、学校教育においてはこれらを調和的にはぐくむことが必要である旨が法律上規定されました。
中央教育審議会では、それらを受け、今回の学習指導要領改定では、方向性を
① 改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂、
②「生きる力」という理念の共有、
③基礎的・基本的な知識・技能の習得
④思考力・判断力・表現力等の育成、
⑤確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保、
⑥学習意欲の向上や学習習慣の確立、
⑦豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実、として示したわけです。
美術科の改善の基本方針は、「創造することの楽しさを感じるとともに、思考・判断し、表現するなどの造形的な創造活動の基礎的な能力を育てること、生活の中の造形や美術の働き、美術文化に関心をもって、生涯にわたり主体的にかかわっていく態度をはぐくむことなどを重視する。」となっています。
そのために、新たに共通事項として「子どもの発達の段階に応じて、各学校段階の内容の連続性に配慮し、育成する資質や能力と学習内容との関係を明確にするとともに、小学校図画工作科、中学校美術科において領域や項目などを通して共通に働く資質や能力を整理し、〔共通事項〕として示す」とあり、また「創造性をはぐくむ造形体験の充実を図りながら、形や色などによるコミュニケーションを通して、生活や社会と豊かにかかわる態度をはぐくみ、生活を美しく豊かにする造形や美術の働きを実感させるような指導を重視する」とあります。
鑑賞については「よさや美しさを鑑賞する喜びを味わうようにするとともに、感じ取る力や思考する力を一層豊かに育てるために、自分の思いを語り合ったり、自分の価値意識をもって批評し合ったりするなど、鑑賞の指導を重視する」となっています。国際人としての資質の涵養としては「美術文化の継承と創造への関心を高めるために、作品などのよさや美しさを主体的に味わう活動や、我が国の美術や文化に関する指導を一層充実する」とあります。この基本方針を明確にとらえ具現化していくことが求められています。そして、これら基本は美術教諭全員がおさえておくべきものです。
少子化に伴う学級減と今回の改定で、各地域での美術教諭の減少がさらに進むと考えられます。校内においては、自分以外に美術教諭がおらず専門的なアドバイスをもらえないこともあります。状況は厳しいものがあります。だからこそ、研修会、研究会が重要で大切になります。より指導実践力を高めるためには、組織を活かした連携が不可欠です。各地での理事や関係者の方々が、それぞれの地域で組織的により活性化を図っていただき、情報を発信しあうことが益々重要となっています。今後の美術教育の充実と発展のためよろしくお願いいたします。
最後になりましたが、数年間にわたり本連盟の牽引車として頑張っていただきました松本明前理事 長と森繁樹事務局長をはじめ大阪の先生方に感謝申し上げます。なお、現在ホームページの立ち上げにむけ、作業に取り掛かっています。機能にはまだ時間がかかります。開設の時は連絡をいたします。
レポーター:山崎 正明