美術の先生へのメッセージ
2011年7月30日
2011年、札幌市の中学校を退職された石谷正美先生が「札幌市の中学校美術の研究集録 第18集」(A4サイズで厚さ3㎝!)に大事なメッセージを残してくださいました。ブログの掲載をお願いしたところ、快諾していただきました。地域のよって、事情は違うとは思いますが、ぜひお読みください。
「美術の伝道師に」
札幌市北白石中学校
校長 石 谷 正 美
定年退職を迎えるに当たり、当時の札教研の諸先輩はじめ、お世話になった美術の仲間、素敵な後輩に、顔を思い浮かべながらこの紙面を拝借して感謝の気持ちと励ましの言葉をおくりたい。
私は22歳から34歳までの12年間、美術の他に国語と保健体育の授業を受け持ってきた。専門教科であるにもかかわらず美術の時数が極端に少なく、美術の時間がとても待ちどおしかったという経験がある。他教科を持たないのは、たったの3年間しかない。そのためか美術を教える時間がとにかく楽しかったし、とても充実していた様に思う。当時を振り返りながら、今、沸々とわき上がる思いは、美術という教科の素晴らしさと愛おしさである。
釧路管内と空知管内を経て30歳の時に札幌市に転入した私にとって、札幌市以外で出会った先生方から学ぶことは多かった。しかし、なんといっても札幌市では、こちらが学ぼうとする気持ちさえあれば、いくらでもそれに応えてくださる先生がいた。札幌市の人的条件は本当に恵まれていると思う。多くの先生との交流を通して、影響を受けながら自分も成長できたのではないかと思っている。
旧札教研の活動や中文連の活動の経験を通して、少しずつ美術教師としてのあるべき姿や自分なりに強く意識してきたことをまとめてみると、次の8点程になる。それは①美術教師としてのプロ意識をもつこと。②教師として生徒の力を最大限に引き出すこと。③3年間を見通したバランスのいい体系的な年間指導計画を作成すること。④常に新しい題材開発を心がけ、実際に試作品を多数作ってみること。⑤他教科の教師から「さすが美術だ」と言われるような実践をすること。⑥生徒には作品の完成度にもこだわらせ、成就感を味わわせること。⑦教師主導の注入的教え込みの授業にならないよう気を付けること。⑧自分の実践と学習指導要領とに整合性を持たせること、等々である。
また、話は変わるが、札幌市の1人配置校が約8割になっている現在、教師間の交流ができ、力量を高める一番身近な研修の機会が、札教研事業の研修の場だと思う。10月に行われた実践研究日の各地区の様子を聞くと、各地区とも工夫を凝らして頑張っている様子が伝わってきた。しかし、残念ながら1人配置校のデメリットも同時に感じられた。中学校では他教科に口出ししない傾向が強く、このことが自分は出席しなくてもよいとか面倒くさいことから逃げようとかの甘えの温床になっていることである。
札幌市では札教研事業が市の研修事業として整備されてから4年近くが経つが、校内研究を中心にしながらも美術項目の研究が保障されている。基本的には全員参加が前提の研究組織である。このことを真剣に考えなければならないだろう。また、札教研事業は中文連美術とも密接な繋がりがあり、「札幌市中学校美術・書道展」も時代の流れの中で少しずつ組織の形を変えながら歴史を刻んで今日に至っている。
昭和43年度に札教研美術部会の中に中文連対策委員会を設置し、研究成果の検証の場として本展を位置付けた歴史がある。札教研事業が研究分野を中心に交流してきたことに対し、その裏付けになる研究実践の発表・交流する場として、表裏一体の活動として位置づけることができ、有機的な構造となっており、札幌市美術教育の誇れる一つでもある。
このように札幌市の美術は素晴らしい素地がある。皆さんには、札教研事業には声を掛け合い集って、「美術大好き」と言わせる生徒をつくることと、一人一人が美術の素晴らしさを伝える伝道師になってほしいと願っている。
(取材 山崎 正明)
レポーター:山崎 正明